使用ソフト:Blender4.0.0、 Fusion 360
3DCADと3DCG
3DCGも3DCADも大まかにいえば3Dモデルを扱うものではありますが、用途やモデリング方法、活用場面などその実態は大きく異なります。
このサイトでは3DCGをメインに取り上げて解説していますが、本記事では、3DCADとの違いに着目することで3DCGについてさらに理解を深めていければと思います。
なお、CADやCGには2Dと3Dがありますが、このサイトの本筋は3Dであるため、本記事では3Dに絞って紹介しています。
※3DCGの概要についてはすでに解説した記事があるので3DCGとはをご覧ください。
CADとは
CADとは、Computer Aided Designの略で、コンピューターを用いたデザイン支援のことです。
具体的には、工業製品や建物など現実に存在するものを設計する際に用いられます。CADにも3Dと2Dがあり、3DCADは2D図面を3Dモデルに起こすことや、反対に3Dモデルから2D図面を作成することができ、2DCADは図面をそのままのデータで編集することができます。
3DCADでは、設計したものが実際の使用場面において力や熱などによってどのような影響が生じるかなどのシミュレーションが行えます。
CADはソリッドモデル、CGはサーフェスモデル
ソリッドモデル
ソリッドモデルとは、物体の中身が詰まったモデル構造です。モデルは必ず閉じていなければなりません。 よって、モデルには質量が存在し、体積を持たせられます。また、材質を設定すればそれに伴う密度を持たせることもできます。現実に存在するものを正確に表現する必要のある3DCADでは、ソリッドモデルを用いることが多くなっています。また、3Dプリンターで造形する際には、ソリッドモデルの状態にする必要があります。
サーフェスモデル
サーフェスモデルとは、厚み0の面で構成され、中身が詰まっていないモデル構造です。
よって、モデルには質量が存在せず、閉じた形状だとしても体積は持ちません。
※3DCADでもモデリングの段階でサーフェスモデルを用いることはありますが、そのままではシミュレーションや造形などが不可能なため、最終的にはソリッドモデルに変換します。
最終的なCGモデルはサーフェスモデルの一種であるポリゴンモデルによって表現されています。
作成過程では上のようななめらかな曲面も使用されることがありますが、どちらにしても厚みが0で中身が詰まっていないのが特徴です。
またCGモデルの曲面はポリゴンという面が無数に集まってできているのに対し、CADモデルの曲面は完全に1枚の曲面によって構成されています。
よって、CGモデルの曲面は拡大するとポリゴンの形状が見えますが、CADモデルの曲面はどれだけ拡大しても曲面のままです。
CADとCGのモデリングって何が違う?
3DCADソフトと3DCGソフトにもいろいろとあるので大きいくくりで一概に「3DCADはこうで3DCGはこう」とは言えないのですが、あくまで傾向としてお伝えできればと思います。また、弊社ではCG作成の際モデリング手法としてポリゴンモデリングをメインで使用しているため、CGに関してはポリゴンモデリングベースの説明になりますがご了承ください。
履歴
CADソフトには大きく分けて、ノンヒストリー型とヒストリー型があります。ヒストリー型のCADでは、モデリングの過程で作成順序などのモデリング履歴が作成されます。
これにより、後から任意の段階での数値の変更などを全体に反映させることが可能です。機械部品などの設計時に後から設計変更を加えるときに役立ちます。
一方、3DCGにおけるモデリング履歴は3DCADソフトのものとは性質が違い、任意の段階のモデリングをやり直して全体の形状に反映できるものではありません。
よって、CGモデリングの際は基本的に一度作成したものはそのままで、以前の段階に戻って全体の形状に反映させるといったことは考えません。修正したい場合は、現在の形状から目的の形状に作り替える方法を試行錯誤します。
履歴の作られないノンヒストリー型の3DCADで作業する際もこういった思考でモデリングすることになりますが、3DCGソフトではヒストリー型CADのような履歴が作られないことを踏まえると、履歴についての考え方は3DCADと3DCGは違うといってよいでしょう。
※(補足)
CGソフトによっては非破壊モデリング(もとのモデル形状を損なわずに形状を編集するモデリング方法)の機能が充実しているものもあります。しかし、こういったものもCADにおける履歴とは性質が異なります。また、そういった機能で対応できるのは形状が直線的なものや数学的な曲面で表現できるものがほとんどであり、それらで表現不可能なモデル、例えばキャラクターや人体などを作成する際には使いにくいです。
モデリング形状や手順の自由度
例えば、CADで円柱を作成したとします。この場合下図の右のような形状に作り替えるのは困難です。一方、CGのポリゴンモデリングでは、ポリゴンを切って動かすだけなので比較的簡単に実現できます。
3DCADでは3Dモデルを作成するために、2Dの下書きを押し出す・回転するなどある程度決まったコマンドがあります。そのため、上のような変更を加えるだけでも、形状の数値変更だけでは対応できず、コマンド自体をやり直す必要があります。ノンヒストリー型のCADでも円柱の状態からダイレクトに右の形状にもっていくのは難しいことが多いです。
これは一例にすぎませんが、CGのポリゴンモデリングは、ポリゴンを操作しながら形状を作成するというシンプルな工程で成り立っているからこそ、対応できる形状の幅が多いように思います。
例えるなら、CADのモデリングは積み木で、CG(ポリゴンモデリング)はペーパークラフトです。積み木は様々なものを作れますが、三角、四角、丸などその場にある形のものしか使用できません。一方、ペーパークラフトは最小単位が一枚の紙であるという制約しかないため、どのようなモチーフ、形状にも柔軟に対応できます。
また、手順においても、3DCADと3DCGでは自由度が異なります。3DCADの場合、ある平面に対してスケッチといういわゆる2Dの下書きを作成し、そのスケッチを押し出し、または回転などの操作を行うことによって立体にするといったある程度決まった手順があります。一方で、3DCGのポリゴンモデリングにおいては、最初から立方体や円柱などのオブジェクトを空間上に配置し、そこからポリゴンを操作しながら目的の形状にしていく方法が一般的です。その過程においても、面を押し出して形状を作成することもあれば、点のみでアウトラインを作成し、後から面を張る方法など様々な方法があります。このように、3DCGでは最終的なモデルさえ完成させられれば作成方法は自由なことが多いです。
このように、3DCADと3DCGではモデリングの手順や形状の自由さが違います。これも、3DCADは「製品等を設計するためのもの」、3DCGは「現実にないものを作り出すもの」といった根本的な考え方の違いからくるように思います。
まとめ
本記事では、3DCADと3DCGの違いについて、様々な視点からお伝えしてきました。3DCADを使用していた方が3DCGを始めようとするとき、またはその逆の場合、操作性の違いに戸惑うことが多いと思います。本記事でお伝えした通り、3DCADと3DCGは根本的な考え方から違い、まったく別物です。
3DCADと3DCGの違いをしっかりと区別し、別物であるという認識をしたうえでツールについて学んでいくことが重要です。
弊社では、図面・イラストや写真などからCGデータ、CADデータを作成するサービスを展開しております。3Dモデル作成に関するご相談・ご依頼は電通総研セキュアソリューションにお問い合わせください。